
相続した実家を、売る・貸す・直す・保有する。名義や築年、建物の状態と費用を整理してから、家族に合う進め方を比べます。
実家を相続したときの、よくある迷い
家のことは、分からないことが多いものです。
「実家が空き家になったけれど、何から手をつければいいのか分からない」
「売ったら税金がたくさんかかるんでしょう?」
「古い家は、直すより壊したほうが安いんですか?」
「親に土地の資金を援助してもらうなら、いつまでに何をすればいいの?」
今工務所が、五所川原・青森・弘前・つがるで家づくりに携わってきた経験をもとに、できるだけ分かりやすく解説します。
今回のテーマは、「空き家の3,000万円控除と、実家を相続したときに考える順番」です。
空き家の3,000万円控除|延長は要望段階
国土交通省の「令和9年度税制改正要望」には、空き家の特例の延長・拡充が盛り込まれています。要望段階の内容であり、延長や対象拡大が決定したという案内ではありません。
全部で数十項目ある要望のうち、7番目に並んでいるのが「空き家の発生を抑制するための特例措置の拡充及び延長」です。
これは、一般に「空き家の3,000万円控除」と呼ばれている制度のことです。
相続した親の家を売ったとき、一定の条件を満たせば、もうけ(譲渡所得)から最大3,000万円を差し引ける、という仕組みです。
現行制度
現行の売却期限は2027年12月31日。適用には築年・相続・利用状況などの条件があります。
延長の要望(未決定)
今回の要望は、期限を2031年(令和13年)12月31日まで4年間延長することや、築年要件を緩和することなどです。緩和後の具体的な適用条件は、成立後の法令・国税庁の案内で確認する必要があります。
現行制度の主な条件・売却期限を確認する
国税庁の説明による、現行制度の主な条件です。建築年月だけで適用は決まりません。原則として相続直前は被相続人だけが住んでいたこと、相続後に居住・賃貸・事業に使っていないこと、区分所有建物でないことなども確認し、必要書類を添えた確定申告を行います。
売る期限は、令和9年12月31日まで。
対象になる家は、昭和56年5月31日以前に建てられたもの。
売却代金は1億円以下。
相続開始の日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売ること。現行制度の2027年12月31日という期限との両方を満たす必要があります。
耐震基準に適合させて家を売る方法と、家を取り壊して敷地を売る方法があります。2024年以降の譲渡では、売却後、その翌年2月15日までに耐震改修や全部の取り壊しを完了する場合も対象となり得ます。
2024年以降の譲渡で、対象の家屋と敷地の両方を相続・遺贈で取得した相続人が3人以上の場合は、各人の控除上限が2,000万円となります。
ここで、少し不思議な数字の話をします。
昭和56年5月31日と6月1日。たった1日の差です。
でも、この日をまたぐかどうかで、いまは控除が使えるか使えないかが変わります。
この建築年月の区切りは、いわゆる新耐震基準への移行時期に対応しています。ただし、新耐震基準は建築確認の時期などをもとに判断するもので、完成した日付だけで建物の耐震性能が決まるわけではありません。
つまり「古すぎる家を減らす」ためにつくられた制度が、時間がたって「昭和50年代後半から60年代の家」を取り残しはじめている、ということです。
もうひとつ、期限が迫っている制度があります。
親や祖父母から住宅資金をもらうときの贈与税の非課税措置です。
国税庁によると、対象になるのは令和6年1月1日から令和8年12月31日までの贈与で、省エネ等住宅なら1,000万円まで、それ以外は500万円までが非課税になります。
つまり現行の期限は、2026年の年末です。
令和9年度税制改正要望では、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置等について、必要な検討を行い、所要の措置を講じるとされています。延長期間や新しい適用条件が決定したという案内ではありません。
いずれも要件が細かい制度です。実際に使えるかどうかは、税理士や税務署でのご確認をおすすめします。
青森県の空き家は98,800戸。空き家率は16.7%です
制度の話を、青森県の現実に置き換えてみます。
青森県が公表した2023年(令和5年)住宅・土地統計調査の結果では、県内の空き家は98,800戸、空き家率は16.7%でした。
これは居住世帯のない住宅全体の集計で、賃貸・売却用や別荘なども含みます。すべてが放置された住宅という意味ではありません。
約10万戸という数字は、なかなか実感しづらいと思います。
管理や活用の状況は家ごとに異なります。雪の多い地域では、冬の点検・除雪の担当も早めに考えておきたいところです。
積雪や凍結、雨漏りなどで傷みが進む場合があります。屋根・軒先・雨樋・外壁の状態は、安全を確保したうえで専門業者と確認しましょう。
私たちが現地調査にうかがって「もう2年早ければ、屋根だけで済んだのに」と思うことは、正直に言って少なくありません。
五所川原・津軽では「昭和56年」と「片付け」が分かれ目になります
ここからが、五所川原・つがる・鶴田町といった津軽の実情の話です。
物件の価格や販売状況は変わるため、現在の売地・中古住宅一覧でご確認ください。相続した建物は、築年だけでなく、名義・利用状況・耐震性・残置物の量を合わせて整理します。
一方で、昭和57年、58年、60年に建てられた実家は、いまの制度では対象外です。
ちょうど今、相続が起きはじめている年代の家が、ここに集まっています。
だから今回の要件緩和の要望は、津軽にとっては小さな話ではありません。
ただ、税制より先に効いてくるお金があります。解体費と片付けです。
売却代金と、片付け・解体・測量・登記などに必要な費用は分けて比較しましょう。工事費は面積、構造、搬出経路、残置物などで変わるため、現地調査後の見積もりで確認します。
解体や大型リフォームでは、建物の工事費に加えて、家の中に残った物の分別・運搬・処分費も確認が必要です。
家具、布団、農具、タイヤ、仏壇。処分するものが多いほど、分別と運搬の手間が増えて、そのまま金額に乗ります。
逆に言えば、ここはご家族の側で減らせる部分です。
見学に来る方の反応も変わります。物が残ったままの家は、広さも間取りも伝わりません。
片付けを進めると、見学時に部屋の広さや状態を確認しやすくなります。
相続した実家、最初に確認する6項目
- 名義は誰になっているか(相続登記が済んでいるか)
- 建築年月(昭和56年5月31日以前に建築された家かどうか)
- 水道・下水が使える状態か、止水のままか
- 屋根と雨樋の状態(積雪や凍結による傷みがないか)
- 冬の除雪を誰がやっているか
- 残置物の量(ここが解体費とリフォーム費を左右します)
この6つが分かれば、売る・貸す・直す・そのまま、どの道が現実的かはかなり見えてきます。

掲載の写真は商品・住まいの参考イメージです。この記事に挙げた相続物件や工事現場そのものを示すものではありません。
売る・貸す・直す・そのまま。4つを比較
私たちは、実家のご相談をいただいたとき、いきなり工事の話はしません。
建物の状態と、ご家族の今後の住まい方から、4つの選択肢を比べます。
| 選択肢 | 先に整理すること |
|---|---|
| 売る | 売却の希望時期、名義、税制の適用条件。売却代金と片付け・解体などの費用を分けて考えます。 |
| 貸す | 貸せる状態にするための修繕と、貸した後の管理。建物の状態と管理を担う人を確認します。 |
| 直して住む | 今後の暮らし方と、必要な改修範囲。建物の状態を調べ、工事費と住み替えにかかる総額を比べます。 |
| しばらく保有 | 点検・除雪・片付けを担う人と、その費用。次に家族で方針を話し合う時期も決めておきます。 |
「売る」を選ぶ場合は、税制の期限から逆算します。
控除を使うには、耐震改修か取り壊しが必要になることがあります。どちらも工期と費用がかかります。
積雪期は、天候や現場の条件によって解体・改修の日程が制約される場合があります。
税制の期限だけでなく、調査・見積もり・契約・工事・証明書類の準備に必要な期間を含めて工程を確認しましょう。
「直して住む」を選ぶ場合は、当社のリセット住宅(大型リフォーム)という選択肢があります。
構造の要る部分を残して、断熱・間取り・水まわりを入れ替える方法です。
青森の家が冬に寒い理由と直す順番は、こちらのコラムにまとめています。
断熱・耐震・耐久について当社がどう考えているかは、住宅性能のページをご覧ください。
土地から探し直すという判断もあります。資金の順番については、金利とお金の順番のコラムもあわせてどうぞ。
住み替えも含めて検討するなら、土地・建物の購入費だけでなく、今の家の処分費や改修費を含めた総額で比べます。建て替えが有利になるかどうかは、個別の見積もりと暮らし方をもとに判断しましょう。
そして、贈与税の非課税を使うご予定があるなら、動く順番が変わります。
住宅取得等資金の贈与の現行期限は2026年12月31日です。贈与日だけでなく、翌年の新築・取得や居住、申告の要件も確認して予定を立てましょう。
まだ何も決まっていない段階でも、現状の整理からお手伝いできます。
当社は設計から施工まで自社で行っているため、「直すといくら」「壊すといくら」を、同じ打ち合わせの中で比べることができます。
創業65年、自社の一級建築士が設計し、自社の大工が施工しています。
このまちで、これからも暮らすために。
空き家の話は、建物の話ではなく、家族の話だと思っています。
親が建てた家です。すぐに決められないのが当たり前です。
それでも、雪は毎年降ります。時間は建物に味方してくれません。
だから、決めることではなく、知ることから始めてほしいのです。
この家はいくらで売れそうか。直すならどこからか。壊すならいくらか。
それが分かれば、家族で話せるようになります。
五所川原。青森。弘前。つがる。
そこから一緒に考えてみませんか。
今工務所は五所川原市を拠点に、五所川原・青森・弘前・つがるを施工対応エリアとして、土地探しから設計・施工・リフォーム・アフターまで一貫して対応しています。
制度と統計の確認先
- 国税庁:被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 財務省掲載:令和9年度税制改正要望・空き家特例(PDF)
- 国税庁:住宅取得等資金の贈与の非課税(要件・申告)
- 財務省掲載:令和9年度税制改正要望・住宅取得等資金の贈与税(PDF)
- 青森県:令和5年住宅・土地統計調査の結果公表
制度資料の確認日:2026年10月16日。要望と現行制度を区別し、個別の適用は税務署・税理士へご確認ください。



